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「未来を測る。」

測るの物語 -第3回-

良い条件の整った中古マンションではなかった。立地的に日当たりの期待できない一階の住戸。60㎡弱の専有面積は、お客様が希望している広さに足りない。駅からの距離も徒歩10分以内が要望だったところ15分弱かかる。通常であれば、強く推薦するケースではない。しかし彼には自信があった。なぜなら、その物件こそお客様の理想とするライフスタイルに寄り添うポテンシャルを秘めているという確信があったから─。
「この物件のお客様はお酒が大好きな40代共働きのご夫婦。夜はゆっくりと二人だけの時間を過ごしたいと希望していました」と話すインテリックス空間設計の佐藤。お気に入りレストランの写真や雑誌の切り抜きを打合せに持参するなど、明確なライフスタイルのイメージをお持ちの方だったと言う。
佐藤は、ご夫婦と現地を内覧する時間を夕暮れ時にした。よほどのことがなければ設定しない時間帯である。そして、最寄り駅から物件までを共に歩いた。希望していた条件よりも遠いが、物件までの経路はバスの通る大通りでレストランやコンビニなどが立ち並び、にぎやかだ。「─夜道を歩くのは不安だったけど、ここなら怖くないですね」。ご夫婦の表情が、少し和らいだ。
到着し薄暗い室内を内覧する。専有面積約56㎡。その時点では1LDKの室内と共用施設となるやや広めの専有ガレージ。たっての希望だった「猫を飼いたい」という点は規約上クリアしていたが、部屋の広さや暗さ、使用予定のないガレージはデメリットにカウントされかねない。
「たしかに日照条件はあまりよくありません。ですがこの物件、リノベーションすればバーのような雰囲気に化けますよ。駅までは自宅の目の前から出るバスに乗ればスムーズです。また、このマンションの向かいには深夜まで営業しているスーパーがあるので、仕事帰りにお酒を買ってくれば晩酌もできますね」。ここで納得の表情をうかべるお客様。さらに後日、ガレージは収納スペースとしても使用できることが分かり、広さの問題もクリアに。すべてのピースが、ぴたりぴたりと当てはまる。
照明にも凝った。バー独特のムーディーな雰囲気が出せるよう、天井には複数のダウンライトを設置。それぞれに明るさが調節できる本格的な仕様だ。またバーカウンターの背壁には風合いのあるタイルを貼り、多くのボトルを並べられるように棚を造作。ワインセラーも設置した。
リノベーションが済んで引き渡し後、晴れてオーナーとなったご夫婦からインテリックスに贈り物が届いた。それは御礼の手紙が添えられた小さなモエ・エ・シャンドンだった。
人のライフスタイルは千差万別。だから、インテリックスは思い描く未来を測って、理想に一番近い住まいの提案につとめる。ニーズに合わせて、様々なリノベーションサービスからお客様に最もあったプランを提示することができるのだ。
成功と祝福の象徴として知られるシャンパーニュをグラスに注ぎ、その日佐藤もささやかな祝杯を上げた。

Illustlation : Toshimasa Yasumitsu