「常に心づかいを忘れないこと。それが大切なんです」と、インテリックス空間設計のアフターサービス部を取り仕切る護山は言う。
「当社で取得したマンションのリノベーション工事をするとき、その住居はインテリックスの所有するものです。だから、それぞれの作業者が使いやすいように工具を床に置いていても問題はない。だけど、そのマンションがお客様の手に渡ったら、その時点からはお客様の所有物。そこに訪問してメンテナンス作業をする私たちは、おいそれとモノを床に置いたりはできない。かならず作業をする場所にはきれいなクロスを敷いたうえで、ワークセットを並べる─。そこは徹底するようにしています」。
以前メンテナンスに訪れたスタッフが不注意から床に擦りキズをつけてしまい、オーナーから苦情を受けたことがあった。ちょっとした心づかいでミスは減らせるはず、と護山は語気を強める。
築年数の経過した中古マンションが市場に出回り、それと同時に設備の不具合等も問題になっていた1990年代後半。売買トラブルを減少させ、安心して中古マンションを購入してもらえるようインテリックスは業界にさきがけてリノベーションと最長10年のアフターサービス保証を導入した。
社内に在籍していた接客・サービス業の経験がない五人の職人とともにアフターサービス部を任された護山。しかし、立ち上がったばかりの部署を待ち受けていたのは数々の困難だった。
訪問時のノウハウが確立されていないことで、不快な思いをさせてしまったお客様の自宅に訪れ、深々と頭を下げたことも少なくない。そんな経験から、護山は様々なことを学んだ。
「メンテナンスに入る前、特に気をつけることはエチケットとマナー。補修工事でうかがうということは、ゼロからの関係性ではありません。マイナスからのスタートなんです。そこで、気分を害するようなことがあってはいけない。なによりも、『お客様の気持ちを測る』ことが大切なんです」。
全国から寄せられる問い合わせに対し、スタッフはそれぞれ手分けして案件を担当する。
「多いのが、エアコンや給湯器のリモコン設定ができないなど、設備についてのご質問。そういったことも、メーカーから説明書を取り寄せてお答えします。どうしても分からないということであれば、ご自宅までうかがってお教えすることもあります」。
通常、このような保証の範疇にないサービス対応を売主が行うことはない。なぜ、そこまでする必要があるのだろうか。
「そういった対応を心がけていると『困っていたので、助かりました!』とか『インテリックスにお願いしてよかった』といった言葉を頂戴することがあります。それが、会社の信用につながるんです。アフターサービスの仕事は、信頼を積み重ねることでブランドを守る仕事といえるのかもしれません」と、護山は穏やかな笑みを浮かべた。