決算レビュー
2024年5月期 経営成績の概況
当連結会計年度(2023年6月1日~2024年5月31日)におけるわが国経済は、過去最高水準の企業収益により設備投資は堅調に推移し、消費は回復の兆しが見えるものの、幅広い物価高は持続する見込みで、景気回復は足踏み状態となりました。
東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によりますと、首都圏の中古マンション市場は、成約価格が2024年5月において前年同期比で5.8%上昇し、48ヶ月連続(2020年6月~2024年5月)で前年同月を上回りました。また、成約件数は当該期(2023年6月~2024年5月)において前年同期比5.4%の増加となりました。
リノベーション事業分野における物件販売(リノヴェックスマンション販売)は、販売件数が前期比で2.0%減の1,129件であったものの、平均販売価格が前期を6.5%上回る2,799万円となったことにより、同事業の売上高が前期を4.3%上回りました。加えて、同業他社や個人向けのリノベーション内装事業における受注増や、リースバック物件の不動産信託受益権の譲渡による売上、不動産小口化商品「アセットシェアリング+(プラス)」の組成、そして、ホテル事業の稼働率向上による増収等を要因として、当期における連結売上高は、前期を3.6%上回ることとなりました。
利益面では、リノヴェックスマンション販売において、市場全体の販売在庫の過多をリスクと認識し、前期から持ち越していた在庫の早期売却に注力したことで、価格調整による利益率の低下が影響し、連結の売上総利益が前期を4.6%下回りました。しかしながら、販売費及び一般管理費が縮小(同9.3%減)したことにより、営業利益は前期より31.1%の増益となりました。また、営業外収支として、物件の早期売却と厳選仕入を行ったことで資産のスリム化が進み、支払利息等の営業外費用が減少(同13.8%減)したこと等により、経常利益は前期の2.5倍となりました。
これらの結果、当連結会計年度における売上高は、前期比3.6%増の427億2百万円となり、営業利益が前期比31.1%増の9億31百万円、経常利益が前期比153.9%増の6億7百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が前期比310.9%増の4億14百万円となりました。
セグメントの業績は、次のとおりであります。
セグメント別業績
リノベーション事業分野
当事業分野における物件販売の売上高は、リノヴェックスマンションの販売価格の上昇により、前期比4.3%増の316億10百万円となりました。また、同事業分野における賃貸収入の売上高は、同21.0%減の1億15百万円となりました。そして、同事業分野におけるその他収入の売上高は、リノベーション内装事業の増加等により、同50.3%増の30億55百万円となりました。
これらの結果、当事業分野における売上高は347億81百万円(同7.0%増)となりましたが、リノヴェックスマンション販売の利益率の低下により、営業利益は5億50百万円(同26.6%減)となりました。
ソリューション事業分野
当事業分野における物件販売の売上高は、リースバック物件の流動化や、不動産小口化商品「アセットシェアリング+(プラス)」の組成があったものの前期に比べ24.9%減の52億59百万円となりました。また、同事業分野における賃貸収入の売上高は、同7.0%減の9億42百万円となりました。そして、同事業分野におけるその他収入の売上高は、ホテル事業の稼働率上昇等により同137.6%増の17億18百万円の増収となりました。
これらの結果、当事業分野における売上高は79億20百万円(同9.3%減)となり、営業利益は12億23百万円(同34.9%増)となりました。
今後の見通し
当社は、中期経営方針として、【既存】主軸事業と【新規】先行投資事業の両輪の相乗効果を高めていくことにより経営基盤を強化する、『両利きの経営』を推進しております。2025年5月期においても、既存事業の収益体質の強化に伴う収益の拡大と、先行投資事業である、省エネリノベーション「エコキューブ」の技術開発・普及促進、またDXによる不動産売買プラットフォーム「FLIE」の構築に注力してまいります。
そして、当社は2025年7月に創立30年を迎えるにあたり、次なる成長を見据えた「次世代人財の育成」と、より強固な経営体制づくりを行うための「従業員エンゲージメントの向上」を柱とした『人的資本経営』の実践を推し進めてまいります。
当社の主軸事業は、既存住宅を活かして再生するリノベーション事業で、新築に比べ環境負荷の小さいサステナブルなビジネスです。さらに、現在注力しております省エネリノベーションの開発・普及により、CO2の削減につながる省エネ住宅の供給を増やしていくことが、今後、当社に求められる社会的ミッションであると考えております。既存住宅には省エネリノベーションが“あたりまえ”の時代が訪れることを見据えて、当社が率先して業界に働き掛けながら、普及拡大に努めてまいります。
(2025年5月期業績予想について)
リノベーション事業分野において、リノヴェックスマンション販売は、販売件数1,100件(前期比29件減)、平均販売価格2,914万円(同4.0%増)により、売上高は320億円(同1.4%増)を見込んでおります。また、リノベーション内装事業により21億円の売上を計画しております。一方、ソリューション事業分野において、2024年6月に売却契約した一棟収益物件(東京都豊島区)をはじめとする物件売却により37億円、不動産小口化商品「アセットシェアリング」シリーズの販売により10億円それぞれの売上を見込んでおります。これらによりまして、連結売上高は、前期比5.4%増の450億11百万円を計画しております。
利益面につきましては、リノヴェックスマンション販売において、収益性が低い物件の売却が前期末までに一巡した点、そして、前期に厳選仕入を行った物件が今期の販売対象となるため、収益性が改善するものと考えております。さらに、上記記載の収益物件の売却等による利益寄与が見込まれ、連結売上総利益は、前期比22.4%増の71億37百万円を計画しております。また、販売費及び一般管理費は前期比11.2%増を見込むものの、それらのコスト増を吸収し営業利益は前期比74.0%増の16億19百万円を計画しております。そして、リノヴェックスマンション販売の事業回転率を高めていくことで、支払利息等の営業外費用の削減を図り、その結果、経常利益は前期の1.9倍の11億86百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期の2.1倍の8億96百万円をそれぞれ計画しております。