先の税制改正によって、相続税の対象が大幅に拡大しました。
「自分の相続はどうなるのだろう?」あるいは「自分の親はちゃんと対策してくれているだろうか?」
といったことを気にされる方も増えているのではないかと思います。
一般的に、相続の対策には生命保険が有効と言われておりますが、一口に生命保険といっても様々な種類や形態があります。
また、日本人の約80%が生命保険に加入しています(生命保険文化センター「生活保障に関する調査」/平成28年)が、家族の状況や事情によって必要となる内容が異なってきますので、定期的に点検することも大切になってきます。
生命保険とは、文字通り生命を保障の対象とする保険ですが、以下の様な種類があります。
また、生命保険の契約には、
「契約者」=契約の当事者、「保険料」を負担し、内容変更や解約などができる
「被保険者」=保障の対象となる人、生死などが「保険金」の支払い事由となる
「受取人」=「保険金」を受け取る人、「契約者」が指定する
といった契約上に登場する役割もありますので、しっかり覚えておいて下さい。
◆「死亡保険」
・「被保険者」が死亡したことを事由に「保険金」が支払われる生命保険です。
保障期間の決まっている「定期保険」や、一生涯保障がつづく「終身保険」などが代表的です。
◆「生存保険」
・「被保険者」生存していることを事由に「保険金」が支払われる生命保険です。
「年金保険」などが代表的です。
◆「生死混合保険」
・死亡保険と生存保険を組み合わせた生命保険です。
「養老保険」などが代表的です。
相続は、被相続人が死亡した場合に発生する訳ですから、通常「死亡保険」の機能が役に立つであろうことはお分かりいただけますね。
実際に販売されている生命保険商品は、色々な保障が組み合わさっているケースが多いので、
「死亡保険」の「保険金」がどの様な場合にどれ位支払われるかを確認しておくことをおすすめします。
では、「死亡保険」が具体的にどの様に役に立つのかを簡単に解説してまいります。
まず、大切なことは、「保険金」が原則「現金(振込)」で「受取人」に支払われるという、ごく当たり前のことです。
巷にある相続対策では、不動産の活用や借入金の活用などがありますが、一般的にこの様な対策では、相続人にとって「現金」が増える訳ではありませんし、簡単に換金できる訳でもありません。
実際に相続人には、相続税の支払いがありますし、被相続人死亡後の様々な費用負担が発生いたします。
場合によっては、一定期間の生活費も必要になってくるかもしれません。
次に「受取人」を予め指定していれば、「保険金」は「受取人」に支払われる「受取人の固有財産」になるということです。
後に出てきますが、契約の形態によっては、相続税の対象である「みなし相続財産」となるのですが、あくまで税法上の「みなし」であり、「相続財産」ではありません。
つまり、他に相続人がいたとしても、遺産相続の手続きに関係なく、「受取人」の方が自分の意思で処分できる財産であるということです。
これはとても有用でして、例えば親御様の「この子にこれ位の金額は遺したい」といった希望を簡単に反映することができます。
さらに、現預金の場合、遺産相続の手続きが完了するまでは、使うには一般的に相続人全員の同意が必要となりますが、「保険金」ではその必要が無いということになります。
生命保険は、元来相互扶助の制度で、「死亡保険」には、死亡した方の遺族が経済的に困らないようにするという意味があります。
そこで、「保険金」が「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合でも、「500万円×法定相続人数」までは非課税となる優遇措置が設けられています。
この非課税枠は、「受取人」がどの相続人であったとしても、限度までは使うことができます。
ただし、この非課税枠の対象となるのは、以下の契約形態に限られますので、注意が必要です。
◆非課税枠の対象
・「契約者」=被相続人、「被保険者」=被相続人、「受取人」=相続人
◆非課税枠の対象とならない例
・所得税の対象:「契約者」=相続人、「被保険者」=被相続人、「受取人」=相続人で、「契約者」=「受取人」の場合
・贈与税の対象:「契約者」=相続人、「被保険者」=被相続人、「受取人」=相続人で、「契約者」≠「受取人」の場合
前述の例で、所得税の対象となるケースを掲載しましたが、敢えてその形態とすることにより、相続税の対象そのものからはずしてしまうという考え方もあります。
例えば、お孫さんに現金贈与を行い、その資金の一部を「保険料」として生命保険契約を結ぶ訳です。
この場合は、「契約者」=孫、「被保険者」=本人、「受取人」=孫として契約することになります。
単純な「死亡保険」であれば、「保険金」>「保険料(掛金)」となりますので、お孫さんからみてもメリットがありますね。
簡単でしたが、生命保険、とりわけ「死亡保険」が相続にどの様に活用できるかについて、基本的な内容を説明させていただきました。
皆様に少しでもお役に立てれば幸いです。
他にも少し複雑なスキームですが、「解約払戻金」の価値を活用して評価を引き下げる方法や、経営者であれば、企業が「契約者」となり、受け取った「保険金」を「死亡退職金」に充当する方法などもあります。
複雑なスキームの場合は、それなりにリスクを伴う場合もありますので、専門家に個別に相談されることをお勧めします。
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