このキャッチフレーズ。2000年代初めに小泉政権が打ち出した「骨太の方針」で登場しました。
それから十数年も経った今もなお、我が国のバブル崩壊以降のデフレは出口がまったく見えていません。
そのおかげで、この「貯蓄から投資へ」というフレーズは、いまだに事あるごとに顔を出してきます。
国や政府は、国民に銀行なんかにお金を預けていないで、どんどん投資しなさいと言っています。
しかしそれは個人の将来を豊かにするためというよりは、800兆円にものぼる個人の預貯金を経済回復や成長戦略に使いたいという目論見や、一方でそれを狙う外資の外圧の存在などの背景が見え隠れするわけですが...。
それでもやはり投資はするべき(特に若い世代)なのです。
教科書的にも投資は「したほうがよい」ということではなく、「するべき」とされています。
その理由はインフレヘッジと呼ばれるものです。言い換えると「経済の成長によっておカネの価値が目減りしてしまうリスクの回避」のことです。
普通に経済活動が行われている国であれば、当然に経済は成長していきます。
「長期デフレに陥っている日本でインフレとは」と思ってみても、一応日本だって経済成長はしています。
※過去20年の日本の経済成長率(%) 20年平均では0.95%
1999年 | 2000年 | 2001年 | 2002年 | 2003年 |
-0.25% | 2.78% | 0.41% | 0.12% | 1.53% |
2004年 | 2005年 | 2006年 | 2007年 | 2008年 |
2.21% | 1.66% | 1.42% | 1.65% | -1.09% |
2009年 | 2010年 | 2011年 | 2012年 | 2013年 |
-5.42% | 4.19% | -0.12% | 1.5% | 2% |
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 |
0.38% | 1.35% | 0.94% | 1.71% | 1.21% |
経済が成長するとモノの値段は上がります。そうするとおカネの価値は、モノの価値に反比例して下がっていきます。
何もしないで現金を持ったままでいると、実質的にその現金は目減りしていくのです。
20年前にタンスに入れておいた500円は、500円そのままの形でタンスから取り出せます。
しかしそのときには20年前に100円で買うことができたジュースはもはや110円になってしまっており、昔だったら5本変えていたのに今では4本しか買えません。
20年超の低成長国である我が国を例にするとインパクトが弱いのですが、普通は先進国でも年3%くらいの経済成長をしているわけで、そう考えるとこのインフレというのは結構な資産の目減りを引き起こすのです。
「だから銀行にお金を預けると利息がつくのでしょ」と思われるかもしれません。
しかし、お金を預かる銀行の立場になってみると、経済成長を超える金利を設定することはあり得ません。時間経過によるお金の目減りを銀行が背負うことになるからです。
そのため、預金金利は経済成長よりも低い利率にしかならず、利息だけの運用では資産の目減りは防げません。
「貯蓄から投資へ」
これは政府に言われるまでもなく、自分が貯めている財産を減らさないために必要なことなのです。
一方、このフレーズに従えば、日本国民はあまり投資に積極的ではなかったと言われているわけです。しかしそれは違います。
実際の日本人は投資をしている認識が低いというだけで、かなり大きな金額の投資をしています。
それは「年金」です。
給与天引きにしろ、自ら納付しているにしろ、私たちは年金積立を行っています。
私たちが積み立てた年金運用金は独立行政法人を通じて、各種の投資に回されています。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のホームページを確認すると、2001年から年率で3.18%の収益率で運用されています。
私たちの積立金は経済成長率を上回って増えているということでしょう。 複雑な年金制度や、ちまたで言われている年金問題は別の話なのでここでは触れませんが、日本人は無意識のうちに有用な投資をしており、その成果を享受しています。
年金で老後に生活を支えられている人も多く、その意味では年金とは非常に有意義なシステムです。
そして、この年金ゆえに日本人は投資というものに対して無自覚でいられたのではないでしょうか。
もし年金というものがなく、銀行にお金をためて続けているだけだと、いつまで経ってもリタイヤできない厳しい人生が待っているかもしれません。
数年前にピケティブームというのがありました。
ピケティさんというフランスの経済学者が、格差社会の発生のメカニズムを解説した著書が高額の経済書でありながら大ヒットした現象です。
ピケティさんは格差社会を始めとした経済の不平等の専門家です。
この著書でピケティさんは資本収益率と所得成長率という二つの数字を比較しました。
資本収益率というのは資本つまり財産ですね。財産を運用することでどれくらいの利益を生み出すかということ、所得成長率というのは所得つまりお給料がどれだけ増えていくかという数字です。
この二つの数字を比較するということは、資産を持っていてそれを投資で運用する人と、投資をせず自分が働くことによってのみ生きていく人との比較ということです。
ピケティさんが古今東西の統計データから導き出した結論は
資本収益率 > 所得成長率 という結果です。
そして、資本主義下の社会では、常に資本収益率が所得の成長を上回っており、その差が縮小していたのは第一次・第二次世界大戦のときだけだというショッキングな内容も含まれていました。
貯蓄だけに資産形成を頼るということは、イコール格差社会の負け組への道を歩んでいるということ他ならないというわけです。
年7%の経済成長をしている新興国であれば、所得が現状よりも上がっていくことで生活の充実や進歩を実感することも可能かもしれませんが、低成長の国においてはたいして給料も上がっていかず、会社や資産家だけが富を蓄えていくわけです。
2018年現在、世界的に株価は高水準を維持しており、一方で一般の労働者の所得に反映されていないという「実感なき好景気」が続いています。
自分の労働力よりもおカネのほうが利益を生み出すというシステムの中で、私たちは人生を全うしなければなりません。
国や証券会社の営業マンに言われるまでもなく、私たちは投資というものを本気で考えなければいけない時代の下で生きているのです。
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