リノベーションは、今や群雄割拠の時代である。参入企業は増加の一途をたどり、「苦しい時期に入った」とインテリックス取締役の石積は語る。「業界全体の技術が底上げされたことで差別化が難しくなり、価格競争のフェイズに突入しました。そこから抜け出さない限り、競合と共倒れする未来しかありません」。17期連続1,000戸以上のリノヴェックスマンション販売という国内トップクラスの実績がありながら、その口調には強い危機感がにじむ――。
差別化、でいえばインテリックスグループには「エコキューブ」がある。少ない冷暖房費で家の中を一定の温度に保つ、環境にも人間にも優しいリノベーションだ。物件ごとの温熱計算やメーカーと共同開発した資材や設備など、高い技術力があって初めて可能になる独自のシステムで、これからのリノベーションのスタンダードとなる新商品である。ただ一点、エコキューブには弱点があった。それがユーザーの認知度である。国の施策もあり、省エネ住宅=新築戸建てのイメージが強い。「SDGs、CO2削減、エネルギーコストの高騰。すべての環境がエコキューブにとって追い風で、世間へ周知するには千載一遇の機会。2023年をエコキューブ元年にすべく、攻勢をかけます」。その中心的人物として指揮をとるのが石積だ。
エコキューブのプロモーションの柱は二つあり、カスタマー向けのプロモーションとして2022年末「美人空気」というキャッチコピーでキー局を中心にCM放映を実施。内部ではエコキューブのプロジェクトチームを作り、仕入とともにダイレクトセールスを強化する。「現場のメンバーは、エコキューブが大事な施策だと理解しています。価格競争の中での原価アップは痛いけれど、必死に踏ん張ってくれている。一刻も早くエコキューブの価値を世の中に広めなければなりません。そのプレッシャーは、日々感じています」。グループ会社リコシスでエコキューブをフランチャイズ展開し、普及拡大を加速するとともに、省エネ技術の第一人者であるリコシスの齊藤と二人で全国の拠点を行脚し、勉強会を実施。仲介会社も巻き込み、内外でエコキューブの啓蒙活動を推し進める。
中古マンションはロケーションに優れた物件が多く、新築より価格は手頃でデザインの自由度も高い。そこに省エネと快適性が加われば、エコキューブは間違いなくこれからの住まい選びの選択肢に入る。「家も省エネ性を基準に選ぶ時代が来ます。10年後には省エネリノベーションが『普通』になっているでしょう。現在は、産みの苦しみを負う時期」。どうすれば、快適性やQOL(生活の質)の向上といった目に見えない価値をお客さまに気づいてもらえるか?エコキューブはその試金石だ。時代の潮流を読み、未来を予測する――時代を ”測る ”ことをポリシーとする石積は、こう続ける。「生活様式や価格、環境の変化に合わせ、住まいも変化します。エコキューブは、いわば令和のリノベーション。次の時代に合わせたバージョンアップも必要です。一方で、機能性以上に住む人の人生や、価値観に寄り添うという軸は大切にしたいですね」。青臭い話ですが、と笑うその目は次の時代を見据えている。
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